補助金の効果ってなんだろう 「まちづくり幻想」の失敗例
「まちづくり幻想」(木下斉)を読みました。
地方創生の掛け声があちこちにあふれ、国、県、市町村の補助金がどんどん使われています。そしてそのほとんどが失敗しているから「地方創生」事業をやり続けている現実。この本では「予算があれば地域が再生するは本当か」と疑問を投げかけています。
地域が衰退する不安に対して、学ぶことをせず、事業を増やすことばかり考える意思決定層は必要のない予算を次々に申請させると言います。事業数を増やし、予算が増えると得した気分になるのでしょうが、成果のでない事業が増えても人が疲弊するだけです。
予算のために限りある人材を使ってしまうと、肝心の事業に集中させることができず、総倒れになってしまいます。無謀な戦線拡大は全滅を意味すると言い切っています。
いいこと書いていますね。激しく同意します。
話は違いますが、「政党助成金」という制度があります。国会議員の数に応じて政党活動費を補助する制度です。ほとんどの政党はこの政党助成金をもらっていますが、ただ一つ拒否している政党があります。日本共産党です。
日本共産党のホームページには「日本共産党は国民本位の政治を貫くためには、国民との結びつきを通じて自主的に活動資金をつくるべきだと考えています。このため日本共産党は、政党助成金や企業・団体献金をいっさい受け取らず、党費や「しんぶん赤旗」購読料、個人からの寄付など、党員と支持者、国民から寄せられる「浄財」だけで活動資金をまかなっています。」と堂々と説明しています。
そうなんです。自主的に活動資金をつくってこそ「地域」本位の「まちづくり」を貫くことができるのです。日本共産党はいいことを言っています。でも、その一方で国民へのバラマキ政策を主張するのが理解できません。補助金を手軽にもらえるなら「国民」は「自分の人生」を貫くことができなくなりませんか?
新型コロナウイルス感染症対策でも、未曾有(みぞう)の状況だとして数兆円もの税金が注ぎ込まれています。生活に困っている人、不安をいだいている人が支援金、協力金、その他さまざまな名目の補助金を求めています。
もし、これが先例となって国民が何かに付けて同様の補助金を要求し、政府が支給するようになると思うとぞっとします。30年前は地域振興券というバラマキ政策を、「天下の愚策」と言うだけの気概のある政治家がいました。それが今や国民の求めに応じてばらまくことが政治になりつつあります。
鹿児島県でも無症状者に対する無料PCR検査が始まりました。県の発表によれば1億5千万円の予算を投じるそうです。この検査をすれば感染拡大がとまりますか? そんなわけないでしょ。そもそも無症状なら陽性にならない可能性が高い。PCR検査をしたときは陰性でも、検査した帰り道に感染者と濃厚接触をしたら意味がない。
無症状者に対するPCR検査をしている昨年度からやっている沖縄県。那覇空港では有料でやっています。沖縄は離島という水際対策が可能であるにもかかわらず、感染者の発生率は全国でダントツです。このほかにも広島県では今年の春から広島市や福山市で無料PCR検査を実施していましたが、5月の連休あたりから感染者が急増して緊急事態宣言が発令中。どちらの県も無症状者に対するPCR検査が無意味であることを証明してます。
失敗しているのが明白なのに鹿児島県はやるんですか? 今の鹿児島県は広島、沖縄両県よりも感染者が圧倒的に下回っているほど現場はよくやっているのに。予算を増やし、事業を増やし、戦線を拡大して、職員や検査機関が疲弊し、感染が拡大したら大笑いです。
そして大規模接種。東京、大阪では接種会場はガラガラだそうです。いったい誰が大規模接種をやれなんて言っていたんでしょうか? 鹿児島県でも2箇所でやるそうです。医師の確保はもちろん、入場整理等で人手が必要な上、多くの税金も使うことでしょう。これで会場がガラガラだったら大笑いです。
そういえば鹿児島県は昨年度にインフルエンザの予防接種も補助していました。予防接種を受ける人は過去と比べて大幅に増加したわけでもないのに発生数は皆無に近かった。補助制度のある県とない県でまったく差はありません。コロナ怖さで完全に理性を失っています。
大事なのことなので繰り返します。地域が衰退する不安に対して、学ぶことをせず、事業を増やすことばかり考える意思決定層は必要のない予算を申請し、成果のでない事業を増やし、人を疲弊させ、最後にこの地域(組織)は全滅します。
見えはじめすき透(とお)りはじめ少年は疑ひもなく死にはじめたり(小野茂樹)
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