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2021年3月 2日 (火)

歌コラム的要約千夜一夜物語0009 牝ロバを連れた老人の話

2人の老人の話が終わると,今度は牝ロバを連れた老人が魔神に話しかけました。

「私はもっと不思議な話をしっています。魔神様もそう思うのなら,私にもこの商人の血の残りを分け与えてください」 魔神はそれを承知すると,老人は話し出しました。

この牝ロバは私の女房でした。私が1年ほど旅にでたときのことです。夜に自宅に戻ると女房と黒人奴隷が一緒に寝ているではありませんか。ふたりはキスをしたり,談笑したりと仲睦まじくしているのです。

私を見つけた女房は水差しをもって私のところにやってきました。そしてなにやら呪文を唱え,私に水を振りかけて「犬の姿になれ」」というと,たちまち私は犬になってしまいました。

女房は犬になった私を追い立てたので,私は戸口から逃げ出して走り続けました。やがてとある肉屋の前にさしかかりました。私は足をとめて店のまわりにちらばっていた骨にしゃぶりつきました。店の主人は私を見つけると首根っこを押さえて家に持ち帰りましたが,その家の娘が私をみるなり「おとうさん,この犬は魔法をかけられた男ですよ」というのです。父親が魔法をとくよう娘に言うと,娘は水差しを手にとり,呪文を唱えて私に水を振りかけ「もとの姿にもどれ」と言いました。すると私は人間の姿にかえりました。

私は娘に「女房の姿を私のように変えてくれませんか」とお願いしました。娘は水差しをわたして言いました。「おかみさんが眠っているところへいって,この水をふりかけ,さっき聞いたとおりの言葉を口にして。そうすれば思い通りの姿に変えることができるわ」

私は家に帰ると,女房はぐっすりと眠り込んでいました。私は水をふりかけながら「牝ロバの姿になれ」と唱えると,女房はたちまち牝ロバになりました。

「魔王様,今あなたが見ているこのロバこそ,私の女房なのです」 魔神は牝ロバに向かい「今の話は本当か」と訊ねました。ロバはうなずいて,身振りで「ほんとうにそうです。私の身の上はそのとおりです」と返事をしました。魔神はうれしさに体をゆらしながら,商人の血の3分の1をあたえました。

こうして商人の血は3人の老人に分け与えることになりました。魔神は「おまえたちに商人の血をやってしまったぞ。おまえたちに免じて,おれはこの商人を許してしまったのだ」 これを聞いた商人は3人の老人を抱きしめてお礼をいいました。老人たちは商人にお祝いの言葉をのべて,それぞれ旅を続けるために立ち去りました。

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