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2021年1月26日 (火)

歌コラム的要約千夜一夜物語0001 シャーリヤル王とその弟の物語

今は昔,ササン王朝という国がありました。この国では,兄のシャーリヤルが王となり,弟のシャー・ザマンは夷狄の地サマルカンドの王に封じられました。このふたりは公明正大な政治を行ったため,民はこのうえなく安堵して生活を楽しみました。このような状態が20年のあいだつづいたのです。

ある日,兄のシャーリヤル王は弟に会いたくなりました。もう20年も会っていないからです。王は弟を訪問することを大臣に相談したところ,大臣は弟に招待状と贈り物を贈ることを提案しました。この提案を聞いた王は,白人奴隷や美しい侍女,胸のふくよかな処女などを贈り物とするように命じ,心からの愛情をこめて招待状をしたためました。

招待状を渡すよう命じられた大臣は旅を続け,サマルカンドのシャー・ザマンの宮廷に到着しました。招待状を読んだシャー・ザマンは兄王の都へ出発することを決意しました。

出発の準備をして野営している夜のこと,シャー・ザマンは贈り物をひとつ忘れていることに気づきました。こっそりと王宮に引き返し,自分の部屋に入ったところ,そこには妻の王妃が,台所の脂(あぶら)と煤(すす)によごれた,みにくい黒人の料理人を両腕に抱きかかえて,王自身のじゅうたんの寝床で眠っているではありませんか。王は「まだ都がみえないうちにこんなことが起きるとは。自分が兄の宮廷に長く滞在したら,この売女(ばいた)は何をしでかすかわかったものではない」と言い,太刀を引き抜いて,一刀のもとにふたりを4つにしました。

シャー・ザマンは兄の宮廷に到着したものの,妻の不貞を気に病んで顔色がすぐれません。兄は歓待しますが,ますます具合が悪くなります。みかねた兄王は弟を狩猟に誘います。しかし,シャー・ザマンはとてもそんな気持ちにならないと断ります。翌日,弟を残して兄王は狩猟にでかけました。

宮廷に残ったシャー・ザマンが窓のところに腰を下ろしていると,王宮の裏門がぱっと開いて,二十人の女奴隷が,兄王の記載をとりかこんで現れました。王妃はたぐいまれな美人で,美貌と優艶と均斉と申し分ない愛らしさの典型でした。一同は大きな池の噴水のところにたどりつくと,着物を脱ぎ捨てました。なんと,そのうちの十人は兄王の妻妾(さいしょう)で,ほかの十人は白人の男奴隷でした。それからみんなはふたりずつ組になって離れていきました。一人残った妃は大声を張り上げて叫びました。「ここへおいで,サイードさま」するとよだれを流した大きな黒人が現れ,腕を妃の首に巻き付けました。そのまま男は荒々しく接吻(せっぷん)し,まるでボタン孔(あな)がボタンをしめるように,自分の足を妃の足にからみつけ,地上に押し倒して女を楽しんだのです。ほかの奴隷たちも女どもを相手に同じまねをし,だれもが淫欲を満たしました。

日差しが陰り始めるころになってようやく黒人は妃の胸から体を起こし,みんな王宮に入り,もとどおりに裏門を閉ざしました。シャー・ザマンは嫂(あによめ)のふるまいを見てつぶやきました。「おれの不幸はこれよりも軽いぞ! 兄上は王者の中の王者。それでもこのあさましいことが兄上の王宮で行われ,嫂はけがらわしい奴隷の中でもいちばんけがらわしいやつと濃いにおちている」そうしてシャー・ザマンは自分の右例も失意も悔恨も不平もはらいのけて「この世の男で女の仇心(あだしごころ)に苦しめられない者はひとりもいないのだ!」と繰り返しました。

その日の夕食をシャー・ザマンはむさぼるようにたいらげ,今までにない安らかな夜をすごしました。翌朝も腹いっぱい朝食をしたためたこともあり,弟は元気と体力が回復してきました。そして10日後,兄王が狩猟から帰ってきました。

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