「いい加減にしろ」と怒鳴りたい気持ちを抑えて面談指導
「管理職のオキテ」(岡本全勝)という本があります。この本は公務員の,課長を対象に執筆されたものですが,民間企業の管理職にとっても仕事のヒントになることがたくさんあり,私の座右の書としています。
冒頭に「課長が陥りやすい間違い」が紹介されれています。そのまま引用すると,
「私の部下は出来が悪くて・・」と愚痴を言う課長がいます。そのような人に対して私は「職員があなたより仕事ができたら困るだろう。もしそうだったら,その人を課長にして,あなたを係長にするよ」を笑って言い返します。愚痴を言いたい気持ちはわかりますが,そもそもその発想が間違っています。(略) あなたもかつてはその程度だったのです。(略) その職員たちを使って,仕事を仕上げる。同時に職員たちを育てることがあなたの役目です。
これをどう解釈しますか?
私は今の会社では複数のグループを統括する立場にあります。多くの業務をこなさなければならないのですが,特にAグループとBグループは突出して残業が多く,そして業務の進捗が大幅に遅れているという問題があります。
Aグループはグループ長はいわゆる完璧主義者。部下の提案に対する指摘が細かすぎて,社員たちがその対応に時間と労力を費(つい)やしています。しかもグループ長自身も仕事を完璧に仕上げるために,ネットで検索して情報は収集するものの,提案書などの作成は部下に押しつけてばかりなのでまったくはかどらない。
Bグループはグループ長がいわゆるお人好し。「部下がみんな忙しくて可哀想だから」といって能力以上の仕事を一人で抱え込み,その結果,事業が大幅に遅れています。しかも最悪なのは,その現実に目をつむり,状況を上司に報告せずに隠しています。
以前にも,どちらのグループ長にも残業を削減するよう指導し,本人たちに考えさせてきたのですが,いっこうに改善されない状況が続くため,私も堪忍袋の緒が切れました。先週,両方のグループ長を呼び出して面談を行いました。
Aグループ長は「部下が多忙だから残業が多い。削減と言われてもお手上げだ」と反論しましたが,ではなぜ,担当業務のないグループ長自身が残業するのかの問いになると,「どうしていいのかわからないので,いろいろと調べている」を繰り返すばかり。仕事を完璧に仕上げることしか頭にない,つまり勤務時間内に仕事を終える発想がないことが明らかでした。
Bグループ長は時折涙を流すだけでほとんど無言。これまでの私から指導を受けてきた態度と同じでした。
面談の最後に,Aグループ長には「管理職のオキテ」の抜粋を渡し,再度残業削減の工夫をするよう伝えました。Bグループ長には部下に業務を割り振ることができないのであれば私が割り振るので報告するように,そして,自身の深夜勤務や休日出勤を禁じるよう伝えました。
どちらも不本意な表情をしていましたが,部下をもつ上司が「お手上げだ」とか,職務放棄をしていては,部下ばかりか上司本人も成長しません。上司は書類が相手ではなく,人(部下)が相手の仕事です。両方のグループ長に共通しているのは,時間の概念の喪失(というより,そもそも仕事を進める上での判断基準にない)と,部下とのコミュニケーションの決定的な欠如(Aグループ長は自分の指示を部下に一方的に伝えてばかり。Bグループ長は部下の顔色をうかがうばかりで自分の自分の考えは部下に伝えない)です。
この問題は私にとっても試金石となります。会社が多忙だからこそ,「仕方がない」ではなく,「おろそかにしてはいけない」のだと思っています。私のやり方が正解かどうかはわかりませんが,前に進まなければならないのです。
隣の課灯の消えているちちろかな(小川軽舟)
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