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2020年10月 1日 (木)

「今どきの日本語」を読む

小論「今どきの日本語」(金田一秀穂)を読みました。

金田一先生は「新語・流行語大賞」の選考委員を務めているんですね。私は辞書の編纂ばかりしていると思っていましたけど。学者がこういうミーハーなところに進出しているなんて,学者も偉く(?)なったものだなって思います。

それはさておき,金田一先生が流行語にしたい言葉というのが非常に興味深い。昨年選ばれたのは「ONE TEAM」でした。もう忘れていましたか? 昨年の今頃はラグビーワールドカップが日本で開催され,私はラグビー三昧の至福のときを過ごしていました。「ONE TEAM」。流行しましたね。というか,マスコミがこれでもか,と使い,政治家もこれでもか,と使っていました。私はそっちの印象が強くて嫌でした。

幸い,金田一先生も私と同じ意見でした。

「ある目的のためにそれぞれの得意なことの異なるプロフェッショナルが集まり,一緒に仕事をし,目的が達成されたらそれですぐ解散する」とう経緯を背景にして出てきた言葉なのに,「それがいいんだ」「日本はひとつ」などといい,その関係性をずっと続けようとします。これでは同調圧力と排除の理論が働き,ひどい場合はいじめに発展する。として,自分に都合がいい意味を流通させようとする年配の人たちを静かに非難しています。

この小論の中で,「へぇ」とトリビア票を投じたくなったのは「しーん」の表現です。私たちは静寂に包まれていることを「しーん」と表現しますが,これは手塚治虫がマンガの中で最初に作ったそうです。初出のときは誰も気にとめませんでしたが,いつの間にかみんなが使うようになり,すっかり定着しています。

さて,流行語に戻ります。金田一先生のお薦めの流行語が「肉肉しい」「芋芋しい」といった,言葉と言葉が連想させる感覚が一致している表現。なるほどねえ,でも,こういう言葉って流行語大賞の選からもれてしまうんですよね。イベントや芸能人,お金(商品)と無縁だから。

私が思うに,流行語ってもっと単純で身近なものでもいいのではないでしょうか。例えばスマホを多くの人が使うようになり,短縮言葉が流通しています。例えば「り」。数年前,娘の返信メールが「り」の一文字だったので,????となったことがあります。

後で「了解」を短縮しての頭文字「り」だと知りました。なるほど,言葉としてしゃべるのであれば気になりませんが,メールでボタンを押すのであれば,短くした方が早くて簡単。こういうことこそ流行語となってもいいんじゃないかなあ。まあ,流行語大賞を選考する出版社にとっては金にならない話だろうけど。

べくべからべくべかりべしべきべけれすずかけ並木来る鼓笛隊 (永井陽子)

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