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2020年2月16日 (日)

デジタル人民元がアメリカドルの地位を奪うって本当?

今日の夕方,NHKの「世界のいま」を見ていました。国際通貨として最強の通貨であるアメリカドル。アメリカは中国企業との取引ではドル決済をしないよう求める動きを見せる一方,中国はデジタル人民元で対抗する動きを見せていると紹介していました。

ドル通貨の決済だと,国際間の取引では自国の銀行,アメリカの銀行,相手国の銀行の3つの関所を通らなければならないため,時間と手数料がかかります。しかし,デジタル人民元はそれらが不要。簡便かつ安価なデジタル人民元が出回るようになるとアメリカの力の源泉であったドルの威力が減じていくというシナリオでした。

確かにネット銀行に象徴されるように,手数料がかからないことは大きな魅力です。銀行制度が発達していないアフリカなどでは,送金手数料のかからないデジタル通貨(スマホ決済)がシェアを圧倒しているといいます。先進諸国では伝統的な銀行決済が圧倒的ですが,世界は広いですからね。デジタル人民元が世界的なシェアでドルを凌駕(りょうが)するというシナリオもそれなりの説得力があります。

しかし,デジタルの世界というのはどうも安心できません。ビットコインなど,情報技術の発達によってそれなりの信用性を確保しつつありますが,デジタル人民元も本当に信用性が確保されているんでしょうか?

マーティン・ウルフ(イギリスフィナンシャル・タイムズ紙の経済論説主幹)は,4年前のインタビューでこう述べています。

「アメリカは自由な資本主義市場をもっていて,それが他の市場と比較して比較しても割合うまく運営されている。そして法律に則(のっと)ってこれらの市場で,このお金を自由に引き出したり,使用したり,交換したりすることができる」「中国はこれらの条件を提供できない。法の支配もないし,次の週に中国の政治システムがどうなっているかも確かに予測できないし,ましてや10年先にどうなっているかまったくわからない。そうなると,巨額の人民元をもっていても,誰もそれを自由にトレードできる確信がなければ,ほぼ交換不能通貨ということになってしまう。これでは世界通貨としてのスタートラインにも立てない」

そしてデジタル人民元を予測したかのように,次のようにコメントしています。

「デイトレード,つまり貿易取引の決済のためのお金については,人民元が使われる可能性が高くなるだろう。しかしそれは,流動資産としてであって,世界の主要な資産となることとは異なる。中国で政治的変革が起こらない限り,人民元が巨額のアメリカドルに代わることはないだろう」

さすがですね。本質を突いています。確かに日々の決済ではデジタル通貨を使うでしょう。でもそれを資産として信用されるかはまた別の話。デジタル人民元をいくらもっていても換金できなければおもちゃの紙幣と同じです。

ビットコインがそうだったように,相場が乱高下すればその取引市場は破綻します。結局,世界通貨としての価値は,その通貨の安全性,経済性ではなく,その通貨発行国の世界的信用度の高さにかかっているというべきでしょう。

アメリカが嫌いな人はたくさんいます。でも,アメリカという国は建国以来,ずっと「アメリカン・デモクラシー」の国。多少の強弱はあっても「自由」に最高の価値を置く国です。この国の価値観はそう簡単に変わらないでしょう。

「中国共産党が第一」と考える中国が,「自由」を最高価値とするアメリカにとって代わる日がくるなんて到底思えません。そうなると人民元がアメリカドルを超えることはないでしょう。

ちなみに,中国は100兆円以上のアメリカドルをもっています。

赤い椿白い椿と落ちにけり(河東碧梧桐)

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