アミュ地下フードコートの奇妙な人々 電話男の巻
仕事の帰り、バスの待ち時間にしばしばアミュ地下のフードコートに立ち寄ります。ミックスナッツをつまみに缶ビールを開け、喉を潤しながら本を読みます。長くても30分程度ですが、一人で読書をするにはいい空間です。
今年7月2日のブログにも書きましたが、毎日のようにフードコートに立ち寄るといつも見る顔というのがわかってきます。今日もそんな常連客を見かけました。
常連の彼は一見して30代のサラリーマン。いつも半袖のワイシャツにスーツズボン。顔は浅黒く目の下には大きな隈(くま)。ガラケーを耳に当て、空いているもう片方の手はいつも髪の毛をせわしくつまんでいます。視線は常に四方八方に向けてキョロキョロ。そんな彼の存在に気づいたのは数週間前のことです。
私がテーブル席でビールを飲んでいるときに視線を上げると、10mほど離れた座席でキョロキョロしている彼(以下、電話男)の存在が目に入りました。ビールを飲む度にこちらを見ている電話男の姿が目に入るのが嫌になり、席を移動して彼に背中を向ける側の席につきました。
5分もしないうちに私の隣の席に一人の男性客がどかっと腰を下ろしました。目障りだったその電話男でした。「なんでここに来るんだよ(怒)」と思わず声を上げたくなりましたが、大人げないので無視してビールを飲み続けました。
電話男は隣の席でタブレット端末上で将棋を始めました。食事も飲み物もなし。「しょっちゅうここに来てただの暇つぶしかよ」と呆(あき)れましたが、だからといって害もないので放置していました。するとまた5分もしないうちに立ち去りました。「ああよかった」と思いながら私はビールを飲み干しました。数分後、バスの出発時刻が迫ってきたのでバス停に向かおうと席を立ったとき、再び彼に気がつきました。そう、電話男は席を数分おきに移動していたのです。
今日も電話男がいました。いつものようにガラケーを耳に当てています。「よくまあそんなに話すことがあるよなあ」と思いながらもなんだか違和感を感じ、今日は彼を観察し続けました。視線があわないように注意して。数分後、やはり彼はたちあがり、ガラケーを耳に当てたまま、フードコートのなかをキョロキョロしながら歩き続けます。私の席のすぐ後ろや前の通路などを何往復も。そして私は違和感の正体に気づきました。彼が一言も発していない、口をまったく動かしていないことに。
そう、彼は電話をしているポーズをとっているだけだったのです! 毎日30分以上も!!
私がここに滞在するのは長くて30分。ひょっとしたら彼はその前後もずっとこのポーズをとったままここに居座っているのかもしれないと思うと、なんだか恐ろしくなってきました。ハンターのように何か獲物を狙っているのでは? と勘ぐりたくなります。
次に見かけたときには彼の後ろに立ってみて、彼の視線を追ってみようかしら。少しは彼の考えを理解できるかも知れません。ちょっと怖いですけど。
「結果として」を上につければわが行動の大方は説明がつく(高瀬一誌)
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