巨人大御所のダウンスイングを柳田のアッパースイングが打ち砕く
私が小学生の頃、巨人が人気実力とも他の11球団を圧倒していました。ナイターと言えば巨人戦しかなく、鹿児島では巨人ファンばかり。テレビの実況アナウンサーも当然巨人びいき。解説者も巨人OBが多く、本当に酷い偏向放送でした。
この当時、不思議な論争がありました。それがダウンスイング理論。某巨人元監督が提唱していたこともあって、周囲もそれに賛同していました。一流のバッターになるにはダウンスイングが必要な技術と信じていました。テレビ解説者も右に同じです。
ダウンスイングとはバットを上から下に振り抜く打法。レベルスイングは水平に。アッパースイングは下から上へ。当たり前ですがダウンスイングはゴロを打つのに適しています。かつてアメリカ大リーグのドジャースが強かった頃、長打力はないものの俊足の選手が多かったため、勝つために芝を刈り込み、ゴロの打球が抜けるようにする戦法でした。このドジャースの戦法を金科玉条のごとく奉ったのが当時の巨人軍でした。
理論優先、というよりも大御所優先という悲劇でしょうか。この当時のバッティング論争で席巻していた巨人の影響でしょうか、セントラルリーグの球団はどこもこじんまりとしたデータ分析のチームばかりになったように思います。一方、そんな論争とは無縁のパシフィックリーグは豪快でした。ピッチャーは思いっきり投げ、バッターは思いっきり振り抜く。ロッテの村田兆治、近鉄の野茂、ブライアント、すごかったなあ。
あれから30年。パ・リーグの球団が人気・実力とも巨人を上回っていると思えてなりません。ホークスの大黒柱である柳田選手は現在けがで欠場。それでも交流戦では巨人を破り、優勝を飾りました。柳田と言えばあからさまなアッパースイング。数年前、横浜と交流戦で対決したときに、柳田の打球は横浜スタジアムのバックスクリーンのスコアボードを直撃して観衆の度肝を抜きました。あの豪快なバッチングが見れるのもパリーグだからこそ。
今やダウンスイングなんて耳にしません。忘れられた論争です。あのときのダウンスイング信奉者はまだ生き残っているのでしょうか? 今となってはどうでもいいことですが、なんだかこだわってしまいます。もちろんダウンスイングも立派な打法です。俊足巧打のバッターなら当然の打法。イチローもそうだったんですから。
今振り返ると本当に不毛な論争でしたね。野球好きにとっての暇つぶしの話題に過ぎなかったといえば言い過ぎでしょうか。
「不器用に俺は生きるよ」またこんな男を好きになってしまえり(俵万智)
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