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2019年3月

2019年3月28日 (木)

中国に対抗して、海底からレアアースを採掘するってありえない 

レアメタルとは簡単にいうと鉄、銅、鉛、亜鉛、銀、アルミニウム以外の金属のことです。そしてレアアースとは、レアメタルの中でもさらに希少な17個の元素の集合です。高校生の時に元素表を見たことがあると思います。その中には聞いたことのないような元素がたくさんあったでしょ。それらのことです。

十数年前、レアアース大国の中国が対日輸出を禁止し、日本中がパニックになったことがありました。その後「日本近海の海底で大量のレアアース発見」などと報道し、中国が禁輸してもやっていけるみたいなムードを作り出そうとしいていましたが、今はまったく騒ぎになっていません。なぜでしょうね?

近年、中国はレアアースの世界の供給シェアの85%以上を独占しています。この数字だけみると中国がこれらを禁輸したら大変! と思いますよね。でも、ここに大きなトリックがあります。

現在、陸上で発見されているレアアースだけで、世界需要の1000年分存在しています。ね、中国製がないからといって日本は海底資源を利用する必要なんてないんです。レアアースを中国が独占しているのは製品が安いから。それだけです。採掘や精錬を安くでできるので多の国の鉱山は競争力を失っているだけなのです。

先日読んだ小論「レアメタル 資源の現況と今後の活用法」(岡部徹)には、これらの話が詳しく紹介されていました。

鉱山というと菱刈鉱山のように坑道の奥深くで金の混じった岩を掘り起こし、精錬して金を取り出すというのが一般的なイメージです。しかし、世界の鉱山採掘は破天荒です。例えばアメリカ・アリゾナのモレンシー鉱山。なんと山に直接硫酸をかけ、水溶液中の銅を電気分解して生産します。南アフリカでは巨大な砂山に水をかけてチタン鉱石を採掘します。チリのアタカマ塩原では地下水をくみ上げ、天日干しにして水分を蒸発させるだけでカリウムやリチウムを生産します。

そして中国。鉱山から出る有害な廃水を垂れ流し、有害物を含むゴミを穴にも埋めずに投棄する。こうして環境コストを極めて低く押さえることによって中国は競争力のある鉱石を生産し、世界の生産シェアを独占できたわけです。(興味のある方は ”Baotou Tailing Dam” で画像検索してみてください。多くのショッキング映像が出てきますよ)

本当にこの世の中は、何がいいことなのかわかりませんね。

自らを弔うようにゴミたちは、腐敗、自然発火をなせり(俵万智)