反知性主義を読む
「反知性主義 アメリカが生んだ「熱病」の正体」(森本あんり)を読みました。読んだとは言っても斜め読み。280ページを10分ほどで読み終えたぐらいですから。
トランプ旋風に代表されるようにインテリジェンスへの反発が強いアメリカ。その理由がわかるかもと思って手に取ったのですが事前の予想と全然違う。内容の9割以上はアメリカのキリスト教の歴史です。でもこれこそがアメリカのアメリカたる所以(ゆえん)だとすぐに理解できました。
アナパブテスト教徒、クエーカー教徒など何度か耳にしたこともようやくその違いがわかりました。そして彼らは徹底した平等主義。神の前にはすべての人は平等。だから彼らは金持ちだとろうと教養人だろうと一切容赦しない(尊敬しない)。私はそう理解しました。
トクヴィルやソローなどが登場するなど親しみやすい、そしてアメリカのキリスト教史を非常に理解しやすい良書です。
それにしてもデイビッド・ソロー。「森の生活」の著書があります。懐古主義、老荘思想が好きな私は好んで手にとり読もうとします。しかしどうもとっつきにくい。何がと問われると困るのですが、文明社会に背を向け、自然に近い生活を営んでいる、と私好みなのにどうしてもなじめない。そんなエッセイです。なぜなじめないのか、その理由がこの本を読んで理解できました。
この本では彼をこう紹介しています。「彼(ソロー)は気高い精神の自由を強調したが、実生活では結婚も就職もせず、自立することもないまま長くエマソン(アメリカの哲学者)の庇護と援助に依存した。彼がしばらく過ごしたウォールデンの森は、そもそもエマソンの所有地を彼の好意で借りたものである。エマソンによるとソローは説教者だが説教壇をもたない。学者でありながら学問を糾弾する。厳粛な良心をもって呑気なアナーキーを推奨する。・・・」
これが私の感じていた違和感の正体だったのですね。私の愛読書「ヘンリ・ライフロフトの私記」(ギッシング)も、自然を楽しむ中年の独身男性の日々を綴っていますが、ときには彼が貧乏だった青春時代の回顧があり、現在は遺産相続によって金の心配がなくなった喜びを率直に表現しています。しかし、ソローの著書にはそれがありません。一種の偽善、うさんくささといってもいいかもしれません。それを感じ取ってしまって彼に感情移入ができないんでしょうね。
排卵日に合わせて愛しあうことの正しいような正しくないような(俵万智)
コメント