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2018年11月22日 (木)

「中国・北朝鮮情勢と日本の外交」を読む

新聞やテレビなどのニュースでは、ある事件が起きると、あらゆる分野に精通している解説者がコメントします。例えば韓国における徴用工に対する最高裁判決。日本政府の「日韓基本条約で植民地支配時代の補償問題は解決済」という国際法的な立場からコメントし、「日韓関係の悪化が懸念される」と現実の事象でしめくくる。理論(建前)と国民感情(現実)は違う、考え方はいろいろあるんだ、ということを並列して見せます。

今日は宮家邦彦の講演録「中国・北朝鮮情勢と日本の外交」を読みました。元外交官の宮家氏の経験をもとにした指摘がなかなか鋭い。

例えば1991年、フィリピンで米軍基地反対闘争が盛り上がり、アメリカ軍は同国のクラーク空軍基地とスービック海軍基地から撤退しました。この翌年、中国は「領海法」を制定し東シナ海と南シナ海の領有を宣言。同海域の軍事要塞化を進めていきます。軍事的抑止力が失われ、「巨大な力の真空」が生じた結果、周辺国(中国)が進出したわけです。この事実から尖閣諸島のある東シナ海で「力の真空」を作ってはいけないという教訓が見えてきます。(私も全く同意見。沖縄の米軍基地反対が実現したその先に何が起きるのか? です)

そして北朝鮮。マスコミは「北朝鮮の挑発を許さない」と繰り返しますが、北朝鮮は挑発なんてしていないと断言。なぜなら挑発とは強いものが弱いものに対して行うもので、相手に先に手を出させて相手をボコボコにすることを言うから。そして北朝鮮の行動は軍事的挑発ではなく、外交的威嚇であり合理的な行動だと言います。(私も全く同意見。北朝鮮は非常識という批判には意味がないってことです)

日本に対する提言も斬新です。サイバー攻撃への対応について「善人がどんなに知恵を絞っても悪人には勝てない。アメリカのようにハッカーの中で最も悪質な人を高給で雇い、彼らにハッカー摘発とサイバー防衛をやらせるべき」とまで言います。(私は「ミレニアム」のリスベット・サランデルを思い浮かべます。能力よりも性格を重視する日本社会に存在でできますか?)

他にもありますが多すぎて紹介できません。政治家の能力とは全く無関係の、国会議員の「道徳」度でその評価をしているマスコミ。そしてそれに追従する人たち。ああ嫌だな。

パワーポリティクスに道徳という概念が入る余地はありません。ニュース解説者は理論(建前)と感情(事実)を並列すればすみますが、それが無力だとわかったときには手遅れですよ。

遠目にはもゆる色なり椎(しい)の花 (松藤夏山)

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