タロットカード 大アルカナ18「月」の啓示 女性はミステリアス
50歳を過ぎて、なんと新しい会社に就職しました。
まったく縁もゆかりもない会社ですが、社長のたっての依頼で断るに断れず、転職することになりました。しかも、鹿児島市の自宅からはこの会社まで移動するのに半日以上かかるため、必然的に単身赴任となりました。
久しぶりの一人暮らし。ワンルームマンションでの生活が始まりました。引っ越した当日は、同じフロアと私の部屋の上下の住人にあいさつに伺いました。手土産は「かるかん」5個入のセットです。
驚いたことに、どの住人も20代か30代という若さ。そして共通するのは、誰も自分の名前を名乗らないことです。部屋の玄関に表札なし。郵便受けもすべて無記名。徹底しています。
「こんにちは。AAA号室に引っ越してきたBBです。どうぞよろしくおねがいします。つまらないものですが、どうぞ召し上がってください」と一軒一軒回ったのですが、どこもお礼をいいながらかるかんを受け取るとすぐにドアを閉めます。
ただ、1軒だけは受け取るときに私の顔を見た人がいました。私の下の階に住む20代のすごくかわいらしい女性です。やっぱり名乗りませんでしたが、私の顔をみて嬉しそうな顔をしていたので、ほっとしました。
それから2ヶ月ほどたった昨日のこと。朝出勤のためアパートをでると、その彼女が見覚えのある制服を着て先を歩いていました。気になった私は「おはよう」とあいさつして、彼女の勤め先を聞くと、思っていたとおり、以前、私が勤めていた会社の系列会社でした。
ただ、このときの彼女は無表情で、私の問いに「はい」「いいえ」しか言わず、会話は発展しないまま。すぐに別の道を進んでいきました。「ああ、嫌われたかな。知らない人から突然勤め先がどこかとか聞かれたら警戒するのが普通だよな」 私によくある失敗です。
でも、気になった私は、その日の夜、彼女との関係をタロットで占うことにしました。今週の土曜日に会社の友人たちと飲み会があるので、彼女を誘ってみてみたいと思ったからです。でも、今朝の対応だと私を警戒しているのが当然。そもそも、知らない人ばかりのところに彼女が来る理由なんて思いつかない。それで誘うなんて俺って馬鹿げているよなあ、と思いつつ。
ミュシャタロットのカードを引くと、それは「月」でした。解釈を要約すると「夢の世界があなたと歓迎している」「あなたの本能を信じなさい」、そしてキーワードは「女性はミステリアス」。
このカードの解釈を読んで、「今朝の彼女の対応は彼女の本心ではない」というインスピレーションが私の心にわきあがりました。「そうだよね、女性ってわからないよね」
今夜、仕事からアパートに帰ると彼女の部屋に明かりがついていました。思い切って彼女の部屋の呼び鈴を鳴らすとドアが開き、彼女がマスクもつけずに現れました。さっそく私が飲み会に誘うと、彼女はなんとOK! その返事が嬉しくて「私がお代を出すよ、気にしないでいいからね」と言うと、いえいえそんなと言いながらも嬉しそうに微笑みました。そして彼女の名前を教えてくれました。
やっぱり女性はミステリアス。わからないものですね。
サキサキとセロリ噛(か)みいてあどけなき汝(なれ)を愛する理由はいらず(佐佐木幸綱)