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2022年3月20日 (日)

ロシアのウクライナ侵攻 人口減少国家が戦争するのか?

「薩摩というならず者がいた」(佐藤真)を読みました。

幕末の薩摩藩が倒幕の中心となった理由をさまざまな観点から論証しているおもしろい本です。このなかに興味深い一節がありました。それが「人口増加率が戦争への危険度を決定する」。

もともとこの説は日下公人(くさか きみんど 評論家)氏が広めていたようです。簡単に紹介すると明治から昭和初期に日本が日清戦争、日露戦争、日中戦争、太平洋戦争と戦ったのは人口増加率が異常に高かったからというもの。明治初期の人口3000万人が終戦(昭和20年)時には7000万人になっていたからすごい増加率ですね。

人口が増えても働き口がなければその解決策を戦争に求めると聞けば、なんとなくわかったような気持ちになります。若い男性が少なければ、親は子どもを戦争に行かせようとは思いませんからね。となると今の日本が軍事大国になれるはずがありません。

さて、令和4年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻。すでに3週間が経過しましたが、首都キエフはもちろん、ロシア国境近くのウクライナ第2の都市ハリコフもまだ陥落していません。ロシア軍の攻勢はあちこちで停滞していて、空爆の被害やミサイル攻撃はたびたび映像が流れますが、陸上部隊が市街戦に突入しているというニュースはまだのようです。

ロシア苦戦の原因で指摘されているのが、ロシア軍の士気が低いこと。もともと、ロシアとウクライナは兄弟国というぐらい親密な関係にあり、その国と戦うことに兵士たちが気乗りしないというものです。

しかも、ロシアは人口減少国でもあります。ソ連が崩壊した1990年代からロシアは人口増加率がマイナス(つまり人口が減少)。2010年代はかろうじてプラス(といっても1%未満)となりますが、2018年から再びマイナスに転じています。

しかし、ロシアは戦争をはじめました。

日下公人先生の考え方では、ロシアは好戦的な国にはなりえないはずですが、プーチン大統領に象徴される統制国家にはあてはまらなかったようです。親が子どもを戦争に行かせたくないと思っていても、プーチンには痛くも痒(かゆ)くもないからです。

ちなみに「薩摩というならず者がいた」では、中国が「ひとりっ子政策」をとった帰結として、大義なき戦争を起こせば、きっと「若者を戦場に送るな」という運動が中国国内で起きるだろう、として、中国の脅威は限定的であるかのような意見が述べられていました。

長い目で見れば、ロシアでもそうなるかもしれません。テレビでも反戦集会がロシア各地で開催されて政府の弾圧を受けていると報じています。しかし、もう戦争は始まってしまいました。

今後、ロシア国内の反戦の動きがどうなるか興味深いところです。日露戦争後、共産党がロマノフ王朝を倒したのは、当時のロシア皇帝の圧政に反対する共産主義者たちが立ち上がったから。日露戦争敗北はロシア革命に大きな影響を与えたと言っても過言ではないでしょう。

さて、今回のウクライナ侵攻が失敗に終わればプーチン政権は倒れるのは確実。といって目的を果たしたとしてもロシアの経済的な苦境にロシア国民が耐えられるでしょうか。プーチン打倒にどれだけの人が立ち上がるのか、見守りたいですね。

恐れつつわが予想せし未来には欧州戦乱は入りをらざりき(柴生田稔)