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2019年11月 5日 (火)

心の問題を解決するために必要なのは,理屈ではない物語の力?

今朝他の部署の人から,私の部下が仕事中に執務室を出て,一日に何度も涙を流しているという話を聞かされました。そしてまた,この部下は上司の私には泣いていたことを伝えてもいいと話していたとのことも聞かされました。どうやらうつ傾向。メンタルヘルスに問題があるようです。

このままではいけないと思い,さっそくこの部下と面談をすることに。もっとも,私にとってはメンタルの問題で面談するのは初めて。管理者研修では,本人の話を聞くことが何より大事,原因を無理に究明しない,解決策を示さない,などがあったなあと思い出しながら面談に臨みました。

個室に2人きりになり,面談のきっかけを説明した上で話を向けてみると,自分の仕事が捗(はかど)らない,周囲の人に迷惑をかけている,家にいるときは普通だが会社に行くとつらくなる,ということをたどたどしく口にしました。

最近,この部下の残業が目立っていたので,このチームの業務を再編成して過度の負担がかからないようにしたばかりでした。私はそのことが部下のプライドを傷つけたと思い,私が説明なく勝手に判断して悪かったと謝ったのですが,部下は特に反応がなく,逆に困ったような曖昧な態度。

「私にこうしてほしいということがある? 仕事のことで,あるいはそれ以外のことでもいいんだけど」とたずねても「思いつかない」とのこと。私は無口なタイプで,この部下も無表情なので,今年の4月からこの部下と話をしたことは数える程度。部下を叱ることもなく,一緒に笑うこともなく,仕事上の指示をするぐらい。私と部下の間にそもそも信頼関係がないと言ってしまえばそれまでですが。

30分程度あれこれ尋ねたり,私の体験などを伝えたりして,部下が自ら話し出すのを待ちましたが,それ以上の話はありませんでした。このままで面談を終えるのもどうかと思い,今後は週に1回,10分程度でいいので面談を続けることを提案し,月曜日と金曜日とどちらがいいかと尋ねました。「金曜日」とか細い声で答えてくれたので助かりました。

ひょっとしたら私のことが嫌なのかもしれないと思い,私以外の人と同席して話を聞くことなども提案したのですが,部下は「このことを他の誰にも知られたくない」というので,次回も私が一人で面談をすることを約束しました。

もう20年以上前に「昔話の深層」(河合隼雄)を読みました。著者の言いたいことは,グリム童話のような理屈の通らない物語が人口に膾炙(かいしゃ)されてきたのは,人の心の糧としてこれらの物語が必要だったから。著者は精神科医として臨床中心に研究をしてきました。人の心を癒やすのは理屈ではない何かの存在であると。そんなことをふと思い出しました。

会社からの帰り道,これからのことをあれこれ考えました。私はシェーラザードのように,また話を聞きたいと思わせるほどの語り手ではありませんし,この部下にとって必要な話が何かも分かりません。それに物語が問題の解決になるのかしら?

それでも次の金曜日,相対して私の心に自然と物語が浮かんだら,そのまま話してみたいと思います。そういうときこそ,お互いの心がつながる物語,必要としている物語だと信じたい。でも,浮かばないときは? うーん,そうであっても私は自然体で臨(のぞ)みます。

「たすけて」と言えばあなたは会いに来てくれるだろうかくれぬだろうか(俵万智)

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