「ギャンブラーの数学」でもドストエフスキーの「賭博者」
「ギャンブラーの数学」(ジョセフ・メイザー)を読みました。
題名に「数学」とあるだけに確率論の歴史が最初に述べられて退屈ですが、後半は徐々に面白くなってきます。パスカルの2項定理から始まり、メインテーマは「大数の法則」です。
例えば、スロットマシーンにおいて、1ドル投じると3パーセントがカジノの収益となるよう設定されているとすると、大数の法則によれば、試行(賭ける回数、人数)が多いほど確率的に確かになってくるので、例えば10億ドルがかけられると、カジノの収益は3000万ドル付近になります。しかし試行が少ないと結果は確率から外れやすくなり、大当たりする可能性もあるし、大損する可能性もあります。
つまり、勝ったからといってのめり込んで賭ける回数を増やすと、「大数の法則」によって負けに近づくことになります。
この本では大数の法則だけではなく、ドストエフスキーの「賭博者」からの引用が多々でてきます。人間心理を描くドストエフスキーの作品には、ギャンブルの魅力(魔力)に取り憑かれ、破滅する様がリアルに描かれています。
大学生の頃からパチンコをしている高校の同級生がいます。同窓会で飲んだとき、大学生の時は勝ちまくっていたそうですが最近は負けが込んできていると話していました。彼が感心だと思うのはそのすべての勝負を記録に残していること。確率・統計のお手本ですね。どんなにパチンコとの勝負を重ねてきた彼でも、「大数の法則」には抗(あらが)えない。試行(年数)を重ねるごとに収支はマイナスの領域へと進んでいるようです。
破滅するギャンブラーの特徴は、勝ったことしか覚えていない、自分の必勝法がある(コントロール感がある)、観客に祝福された(注目された)興奮が忘れられない、などなど。一つでもあてはまるようなら要注意ですね。
ところで、今日は平成の次の元号が発表されました。昨日は娘と賭けをしました。「道」という字が元号にあれば私の勝ち、なければ娘の勝ち。なんとなく思いついた字を候補にしたのですが、当然ながら結果は「令和」。負けた私は娘にアンドリューのエッグタルトをおごることになりました。このとき、私には破滅するギャンブルラーの3つの特徴はありませんでした。どうやらのめり込むことはなさそうです。
ルーレット、一寸先は闇となり光となりてめぐる円盤(俵万智)
コメント