カウンターではおしゃべりがいっぱい。冷凍庫には料理がいっぱい。
2ヶ月ぶりに馴染みの小料理屋にいき、いつものカウンター席に座りました。
「2月は常連客が誰も来なくてねえ。お客さんがいないときはお店のテレビを見ていればいいなんて言うけれど、ずっとテレビ見てるのも寂しいでしょう。そういえば先週近所の知り合いが訪ねてきてね、2階の階段から転げ落ちてたいへんだったのよ・・」
久しぶりに会っただけに、おばちゃんはおしゃべりしたいことがたくさんあったようです。話に夢中でお通しがなかなかでてこない。最初の一品がでるまでに焼酎のお湯割りを2杯飲んでしまいました。よくまあしゃべるしゃべる・・・
おしゃべりの合間に、桜エビとにんじんの千切りの和え物、牡蠣の佃煮、ザーサイ、タマネギのケチャップ煮、と思い出したように小鉢がでてきます。
しばらくすると「あなたが来てちょうどよかった」と、オーブンレンジのオーブンの使用方法について質問したり、携帯電話の電話帳登録方法の確認など、他人には聞けないようなことを私に教えてもらえて満足そうでした。
普段お客さんもいないし(この10年、常連客以外の客を見たのは1回だけ)、常連客も亡くなったり、老人ホームに入ったりしてずいぶん少なくなりました。東京から鹿児島に出張で来る常連客も、最近は関東での仕事が忙しいらしく、鹿児島には足が遠のいているとか。
そんな彼の噂話をしていると、その常連客からお店に電話がかかってきました。私も近況報告など他愛もない話に参加。仕事が難航しているようで彼は元気がありませんでした。いつもお店で豪快話をしている彼がこんなに弱気な声をしているのは珍しい。相当仕事が大変のよう。
なんだかんだといろいろありましたが、おばちゃんにとっては久しぶりに賑やかな夜だったのでしょうね。帰りには牡蠣の佃煮と奈良漬けを持たせてくれました。店を出ようとした時も立ち話が10分ほど続き、名残惜しそうでした。
「最近、お客さんがまったく来ないから時間あるでしょう。だから料理をつくっては冷凍庫にいれているの。だから冷凍庫はいっぱい。昔はお客さんが次から次へときて、出す料理がなくて大変だったのにね・・・」
おばちゃん、ご心配なく。私はまた来ますからね。
菜の花といふ平凡を愛しけり(富安風生)
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